[堂島の龍
神室町に灯りがともる
また長い夜が始まる
血と欲望 義理と裏切り
その街を龍は歩いていた
王になりたいわけじゃない
誰かを支配したいわけじゃない
世界が戦いを選んでも
俺は膝をつかない
風間に育てられた孤児
錦と歩いたあの日々
兄弟のように笑いながら
極道の世界へ踏み込んだ
そして一人の男が倒れ
すべてが変わったあの夜
自分なら逃げられたはずなのに
友の罪を背負って檻の中へ
十年という時間を捨て
十年という季節を失い
ようやく門を出たその時
知っていた世界はもうなかった
錦はもう 昔の錦じゃない
由美の姿も消えていた
ネオンに染まるこの街では
過去は決して死なない
堂島の龍よ!
世界すべてが敵になっても
拳を上げて立ち向かえ
権力のためじゃない
名誉のためでもない
守るべき者がいるから
何度でも立ち上がる
堂島の龍よ!
本当の強さとは
目の前の敵を倒すことじゃない
自分の後ろにいる大切な人を
最後まで守り抜くことだ
消えた百億を追う街で
小さな手が彼を掴んだ
遥――
あの子が必要としていたのは
伝説の極道なんかじゃない
逃げない大人だった
神室町が恐れた男は
何十人もの敵を倒した男は
小さな少女と歩きながら
初めて違う強さを知った
仲間を失い
兄弟を失い
血に染まった過去を背負っても
頂点に立てるその場所から
何も求めず歩き去った
極道を捨てようとしても
極道の世界は彼を離さない
東城会
近江連合
裏切り 抗争 流れる血
忘れようとした過去が
何度でも扉を叩いてくる
それでも龍は戻ってきた
戦いが好きだからじゃない
誰かが立たなければならなかったから
沖縄の海のそば
子供たちの笑い声
長い戦いの果てに
ようやく見つけた小さな家
ここならきっと
普通の男として生きられる
そう信じたかった
だが愛する者が増えるほど
守るべきものが増えるほど
敵はその弱さを狙ってくる
堂島の龍よ!
世界すべてが敵になっても
何度だって立ち上がれ
伝説になりたかったわけじゃない
英雄になりたかったわけじゃない
ただ――
家族を守りたかった
堂島の龍よ
その名は時代を越えてゆく
百人の敵を倒せても
すべての別れだけは止められない
そしてついに訪れた
拳では勝てない戦い
遥を守るため
家族を守るため
桐生一馬は――
死ななければならなかった
身体ではない
名前を。
人生を。
存在を。
家へ帰り
愛する者を抱きしめる権利さえも
捨てなければならなかった
殺し屋にも
極道にも
巨大な組織にも屈しなかった男が
最後に出会った
殴ることのできない敵
それは――
別れだった。
記録から名前を消され
別の名を与えられた
堂島の龍は姿を消し
男は――
浄龍となった
服を変えても
名前を変えても
世界に桐生は死んだと言わせても
魂までは消せない
龍はまだそこにいる
そして遠くから見つめた
自分が育てた子供たち
そこには敵はいない
銃も刀もない
それなのに――
あれほど強かった男の目から
涙が止まらなかった
何千の拳に耐えた男も
何度地面に倒されても
立ち上がった男も
愛する家族の前では
ただ一人の人間だった
堂島の龍よ!!
極道がお前を作ったんじゃない
背中に刻まれた応龍でもない
倒した敵の数でもない
堂島の龍よ!!
お前が残した本当の伝説は
戦いの中にはない
人生で何度すべてを失っても
それでも誰かを愛し
それでも誰かを守り
それでも――
優しさを捨てなかったこと
桐生一馬
四代目
元極道
父親ではない父親
友
兄弟
そして――
守る者
神室町の灯りが消えてゆく
長かった夜にも
いつか朝が来る
たとえ世界から
その名前が消えても
誰ももう
「桐生一馬」と呼ばなくても
足音だけが
静かな街に響いている
龍はまだ生きている
龍はまだ歩いている
そして伝説は――
終わらない。